2025年初頭のCES 2025で登場したAMD Ryzen AI MAX+ 395(コードネーム:Strix Halo)は、外付けGPUなしで「RTX 4060〜4070 Mobile相当」のグラフィック性能を持つAPUとして話題になりました。
2026年3月現在、搭載ミニPCは30モデル以上に増え、日本でも手が届くようになってきました。一方で「2026〜2027年に次世代が来るなら待ったほうがいいのでは?」という声もあります。
この記事では現行のAI MAX+ 395の実力と弱点、そして2026〜2027年のAMDロードマップを整理し、「今買うべきか・待つべきか」の判断材料を提供します。
Ryzen AI MAX+ 395 のスペックと実力
まず現行チップの基本スペックを確認しておきましょう。
| 項目 | スペック |
|---|---|
| コードネーム | Strix Halo |
| CPUコア数 | 16コア / 32スレッド(Zen 5) |
| ブーストクロック | 最大 5.1 GHz |
| iGPU | Radeon 8060S(RDNA 3.5 / 40 CU) |
| NPU(XDNA 2) | 50 TOPS(CPU+GPU+NPU 合計 126 TOPS) |
| メモリバス幅 | 256-bit LPDDR5X(最大 8000 MT/s) |
| メモリ帯域幅 | 実効 約 212 GB/s |
| TDP | 55W(45〜120W で設定可) |
| プロセスノード | TSMC 4nm |
| 発売 | 2025年1月 |
CPU性能
Geekbench 6 マルチコアスコアは約20,700点で、デスクトップ向けの Ryzen 9 9900X と同等水準です。「ノートPC・ミニPCなのにデスクトップ級」というのは本当で、PassMark でもノートPC向け CPU ランキングのトップ10以内に入っています。
GPU性能
iGPU の Radeon 8060S は、3DMark Time Spy で RTX 4060 Mobile とほぼ同等のスコアを記録。1080p ゲームでは RTX 4050〜4060 Mobile を上回る場面も確認されており、外付けGPUなしのAPUとしては飛び抜けた性能です。
ただし、AMD自社の「RTX 4070 Laptop GPU比 23〜50%高速」という数値は条件が限定的で、独立テストではRTX 4070 Laptop GPU には10〜12%届かないことが多いです。
ローカルAI推論性能
NPU 単体の 50 TOPS と大容量共有メモリ(最大 128GB)の組み合わせが真骨頂です。
- Llama 3.1 70B クラスのモデルをローカル実行可能
- LM Studio での推論速度:最大 61 tokens/秒(Phi-3.5 モデル)
- 初回トークン生成:0.7秒以内
Apple Silicon の M4 Max と並ぶ「Windows で唯一のローカル LLM 実用チップ」という立ち位置です。
ヒント
Ryzen AI MAX+ 395 は GPU・NPU・メモリがすべて同じ帯域幅を共有しています。大容量の LPDDR5X をそのまま VRAM として使えるため、24GB・48GB 制限のある専用 GPU より大きなモデルを動かせます。
日本で買える搭載製品と価格
搭載製品はノートPC・ミニPC・コンパクトワークステーションなど30モデル以上に増えています。日本で入手しやすいものをピックアップします。
| 製品 | カテゴリ | 主なRAM構成 | 日本価格目安 |
|---|---|---|---|
| ASUS ROG Flow Z13(GZ302EA) | 2-in-1タブレットPC | 32〜128GB | 449,800〜469,800円 |
| MINISFORUM MS-S1 MAX | ミニPC | 128GB | 359,990円 |
| GMKtec EVO-X2 | ミニPC | 64〜128GB | 487,999円(128GB) |
| Beelink GTR9 Pro | ミニPC | 128GB | 約30〜35万円 |
注意
搭載製品の多くは中国系ブランドのミニPCです。品質・サポート体制はメーカーによって差があります。購入前に日本語サポートの有無・保証内容を確認しましょう。
2026年のAMDロードマップ:何が来る?
Ryzen AI 400「Gorgon Point」(2026年1月〜)
すでに2026年1月にノートPC向けが発売された最新世代です。ただしこれは AI MAX(Strix Halo系)とは別系統のメインストリームAPUです。
- Zen 5 + RDNA 3.5 の小幅リフレッシュ
- 最大12コア(AI MAX+ 395 の16コアより少ない)
- NPU:60 TOPS(Ryzen AI 300比 +10 TOPS)
- デスクトップ版は 2026年Q2 発売予定
「AI 400 が来たから AI MAX+ 395 は旧世代?」と思いがちですが、全く別のセグメントです。AI 400 は普及価格帯のラップトップ向け、AI MAX は高性能プレミアム向けです。
Gorgon Halo(2026年)
Strix Halo の小幅リフレッシュ版。CES 2026 で AMD が方向性を示しています。
- Zen 5 のまま、クロック向上・NPU 改善が主体
- 「Ryzen AI MAX+ 398」相当が登場見込み
- Strix Halo(現行)からの性能差は小さい見込み
これが出ても「大幅に刷新された次世代」ではありません。マイナーアップグレードです。
本命は2027年:Medusa Halo
AMD が 2027年後半を目標としているのがMedusa Haloです。現行の Strix Halo と比較すると、スペックの進化幅が大きいです。
比較表データが設定されていません。
注意
Medusa Halo のスペックはすべてリーク・噂情報です。AMD の公式確認はなく、実際のスペックは変わる可能性があります。
注目すべきはメモリ帯域幅の改善です。LPDDR6 への移行により、現行比で最大80〜220%の帯域幅向上が見込まれています。iGPU は CPU と VRAM を共有するため、メモリ帯域幅の改善はそのままグラフィック性能・AI 推論性能に直結します。
現行 Strix Halo の既知の弱点
買う前に把握しておきたい現行製品の課題です。
情報
弱点① メモリコントローラの動作モード問題 一部の構成では、メモリコントローラが 128-bit 読み込みモードで動作し、iGPU 性能を最大 15〜20% 損失するケースが報告されています。購入後の設定確認が必要です。
弱点② サーマルスロットリング TDP が 45〜120W の設定可能域で動作しますが、薄型筐体では継続的なフルパフォーマンスが維持できないことがあります。
弱点③ 大手ブランドが未採用 Dell・Lenovo のメインストリーム製品は 2026年3月現在も未採用。主な搭載製品は ASUS(ハイエンド)か中国系ブランドのミニ PC に限られます。
買うべき人・待つべき人
結論をはっきり言います。
今すぐ買ってOKな人
- ローカル AI 開発・LLM 推論が目的で、今すぐ環境が必要な人
- Windows で Apple M4 Max 対抗のオールインワン性能が欲しい人
- 動画編集・クリエイティブ用途で外付け GPU なしに済ませたい人
- 1〜2年後には別の用途で買い替える前提の人
現時点で競合がほぼ存在しない唯一無二のチップです。「今この性能が必要」なら迷わず買いです。
待ったほうがいい人
- 急ぎでなく、最大限のコスパを求めている人
- iGPU で 1440p/4K ゲームを高フレームレートで遊びたい人(現行は不十分)
- メモリ帯域幅のボトルネック解消を待ちたい人
- Medusa Halo(2027年後半)まで待てる余裕がある人
Medusa Halo は LPDDR6 で帯域幅が現行比 80〜220% 向上し、RDNA 5 GPU は RTX 5070 Ti 相当(リーク情報)とされています。iGPU の弱点が一気に解消される可能性が高く、1.5〜2年待てるなら待ちです。
まとめ:シンプルな判断基準
ヒント
判断フローチャート
- 今すぐ高性能な AI PC・開発機が必要 → AI MAX+ 395 を今買う
- 急いでいないが 2026年中には欲しい → AI MAX+ 395 の価格下落を待ちながら購入検討
- 1.5〜2年は待てる → Medusa Halo(2027年後半)まで待つ
- ゲームメインで外付け GPU あり → そもそも AI MAX は不要
Ryzen AI MAX+ 395 は「2025〜2026年現在における Windows 最強 APU」という地位は揺るぎません。ただし Medusa Halo の登場で陳腐化するのも比較的早い可能性があります。「今この性能が必要かどうか」を軸に判断するのが一番シンプルです。